起業する方は何かやりたい事業があると思いますが、その商品やサービスを顧客に購入してもらうためには、自社の強みや弱みを知る必要があります。
この分析方法として、SWOT分析(スウォット分析)というものがあります。
この分析により、自分の過去の経歴や得意なこと、不得意なことを洗い出して、どのような行動をすべきかがわかってきますので、その分析方法をご紹介します。
SWOT分析とは、S(Strengths、強み)、W(Weaknesses、弱み)、O(Opportunities、機会)、T(Threats、脅威)の頭文字の略語になっています。
つまり、自社の強み、弱み、機会、脅威を思いつく限り洗い出しすることになります。
目次
SWOT分析の方法
SWOTの洗い出し
例として、当事務所で熊本市の飲食業の法人様で行ったSWOT分析は以下のようになります。
①強み
熊本市の中心部にあるということで場所に強みがあったり、若い方に人気の内装やメニューを取り揃えているということが強みでした。
②弱み
起業して店舗数をどんどん増やしていったため資金力が不足していたり、店舗を任せる店長が育っていなかったり、閉鎖した店舗への投資資金を残りの店舗で補わなければならなかったり、飲食業特有のホットペッパーなどに高額な広告費がかかっていることが弱みでした。
③機会
熊本地震で減っていた結婚式二次会の予約が増えてきていたり、社長が参加していた異業種交流会からの紹介で団体客が伸びていたことが機会・チャンスとしてありました。
④脅威
県外のフランチャイズ店が県内に進出してきていたことや、低価格でお酒やおつまみを提供するカフェができたため、顧客を奪われる可能性があったことが脅威としてありました。
このような①~④の強み、弱み、機会、脅威を洗い出し、記載します。
行動すべき内容の作成
強み、弱み、機会、脅威の洗い出しで終わってしまっては、その後どうすべきかということが見えてきません。
SWOTの洗い出しが終わったら、次に行動すべき内容を記載します。
自社の強みをビジネスチャンスに生かすための行動内容として、
『結婚式場に社長自ら営業に行く』ことで、広告費を掛けずに顧客を紹介してもらえるようなチャネルを取りにいきます。
また、『高単価なメニュー開発を行う』ことなどにより、現状の低価格や中価格帯ではない顧客の獲得を狙います。
自社の弱みを克服しビジネスチャンスに対応するための行動内容としては、弱みが主に財務面の弱さであったため、
『広告費を抑えて内部留保を増やす』ことで次の事業展開に備えることができるようにすることや、『店長経験者の採用を行う』ことで、社長が店舗に出なくても営業が回る態勢づくりをすることを目指します。
外部の脅威に対して自社の強みで克服するための行動内容としては、
『地場企業ならではの顧客と距離の近い接客を行う』ことでお店のファンをつくることや、『二次会メニューの開発』を行うことで、9時以降の2回転目のお客さまの取り込みを積極的に行うことを目指します。
最後に外部の脅威と自社の弱みの鉢合わせにならないための行動内容としては、
具体的に行動すべきというよりは、むしろやらないことを決めるという局面になりますので、
『新規出店を行うことが資金的に厳しい』ため現状すぐに新規事業の立ち上げなどは行わない方向で行くことや、『優秀な人材への人件費をあまりかける事ができない』ため店長候補の採用は無料のハローワークや、知り合いの紹介でリファーラル採用を行うことを目指すことになります。
ガントチャートの作成
SWOT分析が終わり、行動内容の作成が終わると、最後に行動計画を作成します。
行動計画を作成しなければ、せっかく考えた行動内容を実行しないままに終わってしまう可能性が高いため、行動計画を立てて、具体的な目標値や行動期限、担当者を決定します。
始めに、アクションプラン(行動計画)に行動すべき内容として先ほど考えたものを記載します。
評価指数としては、行動内容の達成すべき基準の指数を決めます。
たとえば、新商品開発であれば、『商品数』が評価指数となりますし、新規営業であれば『訪問件数』などを指数として、行動しやすいように設定します。
店長候補者の採用の評価指数と『面接した人数』としていますが、採用すべきことが差し迫っている場合は、『採用した人数』としても良いことになります。
KPI(目標値)で、達成すべき目標の具体的な数値を記載します。
ここで注意すべきは実現可能な目標にすべきことです。
実現できない目標値を設定して、達成するための努力をしないようになってしまうと意味がなくなってしまいます。
頑張れば達成できる目標にすべきです。
担当者も決めます。小規模企業や個人事業主であれば経営者のみになりますが、従業員さんもいる場合は、従業員の方の目標も決めることで具体的に行動してもらいましょう。
達成すべき期限を矢印などで図式化しておくとより分かりやすいものができあがります。
まとめ
起業して最初から事業が軌道に乗れば良いですが、上手くいかない可能性もあります。
また、事業が軌道に乗っても一定期間が過ぎると事業の衰退が始まることもありますので、事業内容を転換する必要もあります。
そういった時に自社や経営者自身の棚卸しを行って、次の行動すべきことを考えてみましょう。
SWOT分析はこのような局面で非常に優れた分析方法になります。
当事務所ではお客様と税理士でこのSWOT分析を作成し、今後の事業展開や行動計画を作成し、一緒に進捗度合いを検証しています。
経営者は一人で考えていても先に進まないこともありますので、実際に行動できる習慣づくりを行いましょう。